なんとなくでダブルスをやらないために読む本 ― 書評『卓球ダブルス解剖図鑑』
ダブルスが苦手です。
いや、中学2年生から引退までの1年間はダブルス要員としてレギュラー入していたので、動き自体は慣れているはずなんですよ。中学時代はそれなりに連携の取れたプレーをしていた気がします。
ですが、大人になってからのダブルスは勝手が違います。ダブルスの練習時間が圧倒的に少ない。初見の相手といきなり組んだりする。そもそも固定のパートナーがいない。裏裏だけじゃなく、異質のプレーヤーなどいろいろなタイプの方と組む機会がある。
学生の頃なら組む相手とは毎日打っているから、深く考えずともなんとなく合わせられていましたが、今だとそうはいきません。大人同士だから気も遣いますし。それなりに基本を押さえておかないと、お相手に迷惑がかかります。
では、その基本ってどうやって学べばいいのか。ダブルスの情報ってどうも少なくて、口づてのアドバイスで覚えていくのが一般的な習慣になってしまっています。これでいいのか、いや良くない。
そんな悩める私が手に取ったのがこの本でした。
本書の概要
卓球ダブルス解剖図鑑 | |
著者:藤井 寛子 | |
出版社:エクスナレッジ | |
発売日:2023年7月29日 | |
シングルスとは全く違うのがダブルス。シングルスの幅を広げてくれるのもダブルス。やってはいても、ほんとはわかっていなかったその基本から応用まで必要なこと全部教えます!(帯より) |
テレビやTリーグの解説でもおなじみの藤井寛子さんの著書です。藤井さんのソフトな語り口とわかりやすい解説、わたくし大ファンです。
なおかつ全日本チャンピオンでもあるダブルスの名手の藤井さんが書かれた本ということで、これは間違いないだろうと購入しました。実際、間違いなかったです。
本書の構成は以下のような章立てになっています。
本書の目次
- CHAPTER0 組む―ダブルスとは?
- CHAPTER1 つなぐ―どう動く
- CHAPTER2 出す―サーブ
- CHAPTER3 受ける―レシーブ
- CHAPTER4 決める―戦術
- CHAPTER5 知る―エトセトラ
これらについて、めちゃくちゃ基本的な部分から解説されています。私のような初級者には非常にありがたいですが、中級者以上の方はすでに実践している内容かもしれません。ただ、普段は意識せず習慣的にやっている部分がこの本では言語化されていて、ダブルスに対する理解が深まるんじゃないかという気がします。
この本の最大の特徴は、とにかくイラストによる図解が多いことです。『卓球ダブルス解剖図鑑』というタイトルは伊達じゃありません。各ページの半分以上は図解になっています。そのため理解するのが容易ですし、1時間あれば余裕で読了できます。
ここが良かった
この本がわかりやすさを重視して書かれている点に好感を持ちました。たとえば、上述の目次にも出てきている「サーブ」という単語。正しくは「サービス」と書くべきところを、あえてわかりやすさを優先したのではないかと推測しています。卓球中継における藤井さんの解説からも感じられる、卓球初心者や未経験者にも配慮した姿勢がこの本の全体を通して感じられました。
また、基本的でありながら実戦的な内容になっているのも良い点でした。これも一例を挙げれば、「右+右」や「右+左」、「裏裏+異質」などのペアリング別の特徴が述べられていて、どういった点に気をつけて試合に臨むべきか参考になります。
そしてダブルスだけでなくシングルスの幅も広がる可能性を感じました。ダブルスではつなぎが重要になるため、本書でもレシーブを中心としたつなぎの技術の記述に力が入っています。このダブルスの「つないでパートナーに決めてもらう」という発想が、シングルスにおいても決め球の1本前のつなぎの質を上げるのに役立つんじゃないでしょうか。
あと、この本は初心者にもわかりやすいようにコアな知識は極力排除されている様子なのですが、森薗政崇選手だけは実名が出てきたのが個人的に嬉しいポイントでした。やはりダブルスといえば森薗。
ここが足りなかった
ほとんど記述がなかったのがルール関連です。ルールについてはすでに知っている前提で書かれていました。
ルールを網羅して解説する必要はまったくないのですが、サーブの順番(1ゲーム目と2ゲーム目で変わるやつ)あたりの初心者が混乱しがちな部分は触れてほしかったなと思います。
これが名言
この本で出てきた、個人的に覚えておくべき名言をピックアップしておきます。
シングルスにこだわる気持ちやイメージが強く残っているほど、ダブルスはうまくはいかない
シングルスのイメージでプレーしがちだから、切り替えよう
どうやったらパートナーのよさをいかせるか――というふうに考えながら、いいところと悪いところを探していく作業はけっこう大事
自分のプレーでいつも精一杯でした……
「1で足出し、2で打球」のリズムを作っておく。必ずいったん止めてから打つ
動きながら打つなと繰り返し書かれていました。シングルスにも通じる部分だから気をつけます
以上、参考になったら幸いです。では皆さん、良い卓球ライフを!